まさかあの著名人がこんなにも身近だったなんて!!江戸川乱歩散歩 前編

2013年12月12日   

“怪人二十面相”や“明智小五郎”、“少年探偵団”で有名な
日本の探偵小説の創始者、江戸川乱歩。
実は、名古屋育ちなんです。
さて、乱歩から見る名古屋とは?
今回は、ぶらり散歩をしながら乱歩と名古屋に迫ります。
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■江戸川乱歩の少年時代
江戸川乱歩(本名・平井太郎)は、
1894(明治27)年に三重県名賀群名張町(現名張市)に生まれ、
父の転職に伴い、1897(明治30)に名古屋市に移住しました。
園井町(現中区錦)、葛町(現中区松原)、南伊勢町(現中区栄)、
栄町電車通(現中区栄)、再び南伊勢町と転居を続けます。
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この辺りが栄町電車通だそう。
広小路道と大津通が交差する「栄」の信号のところです。
 

乱歩は、この名古屋で大阪毎日新聞に掲載されていた
菊池幽芳訳の『秘中の秘』を母に読み聞かせてもらったり、
愛知県立第五中学校(現愛知県立瑞陵高等学校)に入学した年には、
熱海へ行った際貸本屋で出会った黒岩涙香(るいこう)の
翻案小説『幽霊塔』を夢中で読みふけったりと
探偵小説にのめり込んでいったそう。
 

ちなみにこの頃、貸本屋が最盛期で、名古屋では江戸時代から明治時代に
“日本一の貸本屋”といわれた「大野屋惣八」、略称「大惣(だいそう)」が
長島町にあり、最多で約3万点の蔵書を誇ったとか。
あの坪内逍遥(つぼうちしょうよう)も少年時代に
頻繁に通っていたことでも有名です。
 

さて、話を戻しますと、父は1908(明治41)年平井商店を開業するも
乱歩が18歳にときに破産し、一家で朝鮮へ渡ったのです。
 

しかし、乱歩は単身帰国し早稲田大学に入学、
卒業後は貿易商社、鳥羽造船所、古本屋開業、支那そば屋、東京市役所社会局、
大阪時事新報記者、ポマード製造所、大阪毎日新聞と職を転々とし、
1923(大正12)年、雑誌『新青年』で『二銭銅貨』を発表し、
ついに作家デビューを果たします。
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こちらは、1927(昭和2)年発行の『二銭銅貨』。
戦前のものですが、焼けずに残っているんですね。
「いきづまってしまって」が「行詰つて了つて」となる古い言い回しや、
少しざらざらとした紙の質感、茶色いヤケ・シミにも歴史の重みを感じます。
(ちなみに、鶴舞中央図書館で借りられますよ)
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乱歩は、『D坂の殺人事件』、『心理試験』などの本格推理もの、
『人でなしの恋』といった幻想的なもの、エロ・グロ・ナンセンス
といわれるようなものなど様々な作品を生み出してきました。
そのうちの一つ、『押絵と旅する男』の第一稿を
“大須ホテル”のトイレに捨てたという話はご存知ですか。
 

■ 『押絵と旅する男』と大須
蟹江町出身の“日本探偵小説の母”、
小酒井不木(こさかいふぼく)邸に出向いた帰り、
当時『新青年』編集長であった横溝正史と“大須ホテル”に泊まったのですが、
作品への自信のなさから、夜中にトイレへ破り捨てたというのです。
 

この話は、横溝の『探偵小説五十年』に収められた
「代作ざんげ」にも書かれています。
 

ちなみに、不木は乱歩の『二銭銅貨』を絶賛し
世に送り出すきっかけをつくった人物で、
中区鶴舞には小酒井不木邸跡地があります。
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(小酒井不木邸跡地が民家の塀の上に)
 

この“大須ホテル”、現在は存在しませんが、
かつて若松町と呼ばれたところにありました。
大須観音の西側に位置し、
国道19号から西へ進み、常盤通につきあたるまでの
大須観音西通の北・花園通の南にある路地の辺りが若松町です。
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“大須ホテル”はもともと遊女屋でした。
大須に遊郭ができたのは、1858(安政5)年大須観音の北に位置する
北野神社付近にあった北野新地に役者や芸人の宿が置かれたのが始まり。
その後1874(明治7)年、公認の遊郭になりました。
 

しかし、翌年1875(明治8)年に敷地拡張のため西大須に移転され、
北野新地があった日の出町にちなみ「旭廊(あさひくるわ)」と
呼ばれるようになったそう。
北野神社の北、若宮通り沿いにも「“日出”神社」がありますよね!
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1978年に始まり、毎年10月に行なわれている「大須大道町人祭」。
この祭の目玉である「おいらん道中」は、こうした歴史的背景から
生まれたものなんですね。
 

後に、この遊郭が愛知郡中村(現中村区)へ移転し中村遊郭となると
旭廓で最も大きかった遊女屋がそのまま旅館“大須ホテル”へと
転用されました。
 

さて、その若松町の北、花園通は花園町、
さらにその北の東西の通りは音羽町と呼ばれていました。
現在では、伏見通に面したビル名に「音羽」が入ったものもあります。
このころの名残でしょうか。
 

この音羽町は、別名「猫飛び横町」。
狭い路地であったため、隣家との軒が近く、
そこを猫が飛び交うような町であったことから名付けられたんだとか。
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大須には「猫飛横丁」という名の古本屋さんもあります。
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さて、乱歩の青春時代と有名なエピソードから栄や大須を見てきました。
お次は、乱歩の作品と関係の深いエリア「鶴舞」です。
後編へ〜続く…


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